(平成21年度の研究内容) がんの増殖抑制・縮小を目的とした新たながん治療薬の探索・開発のために、平成21年度はこれまでに構築したスクリーニング系でp53を分子標的とした目的化合物の探索を行った。スクリーニングは所属機関の保有する微生物代謝産物ライブラリーと化合物ライブラリー、植物抽出物を合せた約3万サンプルを利用して、p53をユビキチンープロテアソームの分解経路に導くユビキチンE3ライゲースのMdm2とp53の結合阻害化合物の探索、並びに野生型p53の有無によって細胞死を誘導する化合物の探索を行った。その結果、Mdm2-p53結合阻害化合物として微生物代謝産物ライブラリーから1サンプル、植物抽出物から1サンプルのヒットを得ることができた。それぞれのサンプルを精製した結果、目的の化合物は微生物代謝産物ではaltenusin、植物抽出物ではポリフェノールの一種であることが分かった。これらの化合物はこれまでにMdm2-p53結合阻害化合物として報告はなく、今回初めてこれらの化合物がMdm2-p53結合阻害能を持つことを明らかにした。野生型p53の有無によらて細胞死を誘導する化合物の探索では微生物代謝産物ライブラリーから複数のサンプルがヒットしており、現在再試を行っている。 (平成21年度の研究成果) 今回の研究成果は、構築したスクリーニング系が目的化合物の探索を行うのに適していることを示しており、今後も引き続きスクリーニングすることで新たな化合物を取得できる可能性がある。また、今回のスクリーニングでヒットした化合物は新たなMdm2-p53結合阻害化合物であり、既存のMdm2-p53結合阻害剤とin vitro、in vivoでの比較など学術的な意義がある。ヒット化合物の取得に成功した今回の結果は、今後化合物の特性の解析や誘導体化を含めた次の研究への展開、最終的な目標である新たながん治療薬の開発につながる重要な成果である。
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