新たながん治療薬の創製を目的としてがん抑制遺伝子であるp53を分子標的とした化合物の探索、開発を行っている。平成24年度はp53-Mdm2の結合阻害剤であるgeraniinやその類縁体であるeugeniinについてin vivoでの治療実験を行った。また、p53依存的細胞増殖抑制を示す新規化合物の大量精製、構造決定を行った。 セルフリーのp53-Mdm2結合阻害のスクリーニングでヒットしたgeraniinは骨肉腫細胞SJSA-1を移植したマウスに対して抗腫瘍効果を持つ事が明らかとなった。geraniinは生薬であるゲンノショウコに含まれる事が明らかとなっているが、ゲンノショウコエキスもgeraniinと同様に骨肉腫細胞SJSA-1を移植したマウスに対して抗腫瘍効果を持つ事が明らかとなった。geraniinの類縁体であるeugeniinはSJSA-1を移植したマウスに対してgeraniinよりも更に強い抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。 p53依存的細胞死を誘導する化合物は5種類の新規物を単離した。それぞれの化合物の構造を決定する為に大量培養して化合物を精製し、平面構造を決定した。 今回の研究成果はp53-Mdm2結合阻害のセルフリーのスクリーニング系でヒットした化合物がin vitroだけでなく、in vivoでも抗腫瘍効果を持つ事が明らかとなったことであり、新たながん治療薬の候補化合物を見出した非常に大きな成果である。geraniinが骨肉腫以外のがんに効果を示すか今後、動物治療実験を進めていく必要性がある。セルベースのスクリーニング系では5種類の新規化合物の構造を決定した。これらの化合物を生産する菌は一昨年、新種として報告されたばかりの菌であり、大量培養を行う事で単離した化合物以外にも目的の活性を持つ新規化合物を取得出来る可能性がある。
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