申請者はBDNFの分泌制御機構を解明するために、分泌小胞会合タンパク質の一つであるCAPS2をターゲットとして、マウス海馬標本を材料に実験を行った。BDNFの分泌を可視化するためにpH感受性蛍光タンパク質であるpHluorinをBDNFに融合したものを作成し、これを海馬分散培養に遺伝子導入することでBDNFの分泌イメージングを行う実験系を確立した。 本方法を用いてCAPS2タンパク質存在下、非存在下で分泌活性を測定したところ、CAPS2存在下で有為に分泌速度が上昇すること、分泌顆粒の数が増大することが観察された。また、CAPS2 KOマウスの解析により、CAPS2によって制御されるBDNFの分泌はGABA抑制性インターニューロンのネットワークに影響を与えていることが示唆され、GABA抑制性インターニューロンネットワークの障害によって海馬におけるシナプス可塑性が影響を受ける事、多くの行動解析において不安行動が増強されることなどが示唆された。また、若干ではあるが、海馬依存性の記憶行動が影響を受け、また、鬱病症状が観察された。 上記の結果により、CAPS2が促進的にBDNFの分泌に寄与していることが示唆され、CAPS2が制御するBDNF分泌は少なくとも海馬抑制性インターニューロンのネットワーク形成に影響を与える事が明らかになったため、22年度はCAPS2のBDNF分泌制御機構をより詳細に検討する目的で、現在より高感度のカメラを用いたイメージング測定系を構築中である。
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