| 研究概要 |
本研究はストレス刺激が末梢血中エストロゲン濃度へ及ぼす影響とその機序の解明を目的として行った.本年度はまず卵巣からのエストロゲン分泌に及ぼすストレス刺激の効果を検討した.実験は3～6ヵ月齢の雌性Wistar系成熟ラットを用い,麻酔下,人工呼吸下で体温,血圧などを生理的に安定に維持した状態で行った.ストレス刺激としては後肢足蹠に侵害刺激を行った.卵巣静脈から間欠的に採血し,血漿中のエストロゲン濃度をEIA法で測定した.その結果,5分間の後肢足蹠への侵害刺激中に卵巣静脈血漿中のエストロゲン濃度および分泌速度は減少した.卵巣に分布する交感神経を電気刺激したところ,α_2受容体を介して卵巣からのエストロゲン分泌が減少することが明らかとなった(論文投稿中).従って,侵害刺激による卵巣静脈血漿中エストロゲン濃度の減少反応には卵巣交感神経が関与することが示唆された.
次に侵害刺激による卵巣エストロゲン分泌減少反応が末梢血中にどう反映されるかについて検討した.初めに末梢血漿中エストロゲン濃度を安静時において測定したところ,末梢動脈血漿と末梢静脈血漿中のエストロゲン濃度はほぼ等しく,卵巣静脈血漿中の濃度の約半分であることが分った.末梢血中のエストロゲンは,卵巣から分泌されるだけでなく,一部は副腎皮質から分泌されるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に由来することが知られている。ストレス時には視床下部-下垂体-副腎皮質系が亢進することは周知の事実である.従って,今後はストレス刺激時の末梢血中エストロゲン濃度の変化を調べ,さらにその濃度変化に対する副腎皮質および視床下部-下垂体系の関与を,副腎や視床下部を除去したラットで調べる予定である.
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