Fosタンパクは神経活動の指標として広くストレス研究に用いられている。本年度は、c-fos-monomeric red fluorescent protein (mRFP)トランスジェニック(Tg)ラット、アルギニンバゾプレッシン(AVP)-enhanced green fluorescent protein(eGFP)融合遺伝子およびc-fos-mRFP融合遺伝子をもつダブルTgラットを用いて、浸透圧刺激に対する視床下部のFosタンパク、eGFPおよびmRFP発現動態を検討した。c-fos-mRFPTgラットもしくはAVP-eGFP・c-fos-mRFPダブルTgラットの腹腔内に体重の2%の生理食塩水(コントロール)および9%高張食塩水を投与し、90分後に灌流固定を行った。脳を採取後、薄切切片を作成し、蛍光顕微鏡ならびに共焦点レーザー顕微鏡を用いて蛍光像を撮影した。また、免疫組織化学的染色法によりFosタンパク免疫陽性細胞の発現を確認した。その結果、9%高張食塩水投与群では浸透圧感受性部位である正中視索前野、終板器官、視索上核、室傍核および脳弓下器官においてmRFPの赤色蛍光が多数観察された。同部位にFosタンパクの発現も観察された。また、ダブルTgラットでは視索上核および室傍核に局在するeGFPの緑色蛍光を細胞質に持つニューロンの核内にmRFPの赤色蛍光が観察され、さらにeGFPの緑色蛍光が増強していることも観察された。コントロール群ではmRFPの赤色蛍光およびFosタンパクはどの部位にもほとんど見られなかった。以上より、緑色蛍光(AVPニューロン)および赤色蛍光(Fosタンパク)を指標として神経内分泌系(下垂体後葉系)のストレス反応(浸透圧負荷)の可視化に成功した。
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