本年度の研究では、光感受性色素(ローズベンガル)を用いた手技により、体性感覚野に局所的に脳梗塞を発症させたマウス脳梗塞モデルにおいて、障害発生後1週間以内で対側健常領域の脳機能が亢進していることがFDG-PETを応用した手法によって証明された。その脳機能亢進が沈静化するまさに週間目の時点で特異的に、神経接合部(シナプス)の可塑性が増加していることが2光子顕微鏡を用いた非侵襲的in vivo imagingによる実験によって証明された。この可塑性変化が起こった後に、梗塞によって失われた機能が回復するが、この時、健常半球の神経回路の再編が起こっていることがin vivo記録法による電気生理学的実験により証明され、行動薬理学的実験により健常半球で左右両方の機能を担っていることがわかった。以上の研究成果は論文発表や学会発表を行っている(項目11参照)。また、さらに今年度は研究を発展させ、環境要因に伴う機能回復の変化と神経活動の変化の関連性を追及するべく、新たな実験系の確立を行った。予備実験の段階において、環境変化に対する行動様式が、上記の神経可塑性が起こる前後で異なっている可能性が高いことがOpen filed testやLocomotion testにより判明した。また、脳梗塞後各時期における健常半球の神経伝達物質の構成が大きく異なっている可能性が高いことが、in vivo microdialysis法による実験によって示唆された。今後、当現象の真偽について追加実験を行い検証する予定である。
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