研究概要 |
我々は、酵母ツーハイブリッド法を用いて成人ヒト心臓cDNAライブラリーから新規エンドセリンA型受容体C末端領域(ET_A RC-tail)結合蛋白質としてJab1を単離・同定した。Jab1はET_ARのユビキチン化、リソソームでの蛋白質分解を亢進させてET_ARレベルを調節していることを明らかにした。さらに、アゴニストであるET-1でET_ARを刺激するとアゴニスト誘導性の蛋白質分解が引き起こされ、ET_ARレベルは時間依存的に減少していく一方、ET_ARに結合しているJab1量が増加すること、またET_ARより代謝回転が速いエンドセリンB型受容体(ET_BR)では、ET_ARに比べて、ユビキチン化が亢進しているとともに、より多くのJab1と結合していることを明らかにした。これらの結果より、Jab1のET受容体への結合量がET受容体のユビキチン化レベルを変動させ、ET受容体の蛋白質分解速度を制御し、その結果、ET受容体レベルが変動することが明らかになった(Nishimoto A.et al, Biochem Biophys Res Commun., 391, p1616-22, 2010)。ET受容体のJab1結合部位として、リソソームでの蛋白質分解に関わるY-X-X-Φ(Y;チロシン,X;任意のアミノ酸,Φ;疎水性アミノ酸)モチーフが関わっている可能性が考えられる。このモチーフは、ET_BR C-tailに存在し、ET_AR C-tailにおいても類似の配列(Y-X-X-X-X-Φ)が存在している。既にYおよびΦを変異させた変異ET受容体を作製し、これらの変異ET受容体を用いて、Jab1のET受容体への結合、ET受容体のユビキチン化レベル、ET受容体の蛋白質分解速度、ET受容体レベルがどのように変化するか現在、検討している。
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