研究概要 |
本研究者は,悪性黒色腫の治療に有効な分子標的医薬品の研究開発に取り組んでいる. これまでに,IL-10活性阻害能を有するImmunoadhesin(膜タンパク質細胞外領域と抗体不変領域の融合タンパク質)の物性評価ならびに生理活性評価に従事してきた.本研究においては,申請者らが独自に開発したペプチド創薬のためのコンピュータ・シミュレーションである「in silico分子進化法」等を活用した,悪性黒色腫の治療に有効なペプチド分子標的医薬の創出を目的とする.前年度に於いては,ブフォリンペプチドを融合したペプチド分子標的薬の分子設計・化学合成・精製ならびに,悪性黒色腫幹細胞膜・核膜貫通能に関する評価を行うために,ブフォリンペプチドの改良と他のペプチド(マゲイニン)を融合させた新規ペプチド分子標的薬の設計・化学合成・精製を行うとともに,共焦点レーザ蛍光顕微鏡によるペプチド分子標的薬の細胞内局在の確認,及び細胞膜・核膜貫通能の評価を行い,設計通りの細胞膜・核膜貫通能を有することを確認した.本年度は,ペプチド分子標的薬のドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築に取り組んだ.具体的には,ペプチド分子標的薬を悪性黒色腫の組織選択的に「送達・集積」させる"非侵襲的同定法"と共に,「内包した分子標的薬の放出」を伴った"光線力学温熱療法"を可能とするDDS製剤の開発とその機能評価を行った.その結果,Enhanced Permeability and Retention (EPR)効果によってDDS製剤を悪性黒色腫の組織に集積させた後,770nmの励起光により非侵襲的に確認(840nmの蛍光検出)するとともに,光源波長を800nmに切り替えることで一重項酸素の発生等によって癌組織の壊死誘導が可能であることが示唆された.
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