神経堤由来のウシ副腎クロマフィン細胞において(1) heat shock protein 90の阻害薬であるゲルダナマイシン処置は、insulin receptor substrate (IRS)-1蛋白量をプロテアソームでの分解亢進により減少させ、IRS-2蛋白量を遺伝子転写亢進により増加させた。(2) リチウム長期処置は、glycogen synthase kinase-3β (GSK-3β)のリン酸化量増加/活性抑制し、Na_v1.7チャネルの細胞膜発現を増加させた。(3) ベラトリジン処置によるNa_v1.7からのNa^+流入は、細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させPI3K/PKC-α、PI3K/Akt、PKC-αの経路を介してGSK-3βのリン酸化量を増加させ、tauリン酸化量を減少させた。以上の成果は、インスリン/インスリン様成長因子受容体シグナル分子(IRS-1、IRS-2、GSK-3β)の蛋白量/リン酸化量が、種々の薬物(ゲルダナマイシン、ベラトリジン、リチウム)により変動することを示し、これらの薬物のターゲット分子が細胞内シグナル応答を正/負に調節していることを認めた。脳の高次機能に必要不可欠なインスリン/インスリン様成長因子受容体シグナルは、他方においてそのシグナル分子群の質的・量的変化が神経変性疾患、糖尿病、炎症、癌に関与している。本研究成果は、これらの疾患にむけた治療/創薬に貢献できうるものである。
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