アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のレニン-アンジオテンシン系(RAS)抑制非依存的作用を解明する為、アンジオテンシンII (Ang II)慢性刺激による高血圧ラットを作製し、この環境下でのACE阻害薬のRAS抑制非依存的効果を解析した。昨年度の結果より、ACE阻害薬のRAS抑制非依存的効果はACE細胞内情報伝達活性化の可能性が示唆された。そこでACE細胞内情報伝達活性化(COX-2の発現誘導)が臓器保護効果に関与しているのか検討を行った。 Ang II投与ラットでは血圧の上昇、心肥大、心臓の線維化、心臓超音波検査により心機能の低下が確認された。ACE阻害薬投与による血圧降下は確認されなかったが、心臓の線維化および心機能の低下が抑えられていたことを明らかにした。組織染色の結果から、ACE阻害薬を投与したラットにおいてのみ、心臓におけるCOX-2の発現が観察された。また、動物実験におけるACE阻害薬の作用はCOX阻害薬によって抑制された。ACE阻害薬がACEに結合し、ACE細胞内情報伝達が活性化され、COX-2の発現を誘導することによると考えられる。細胞実験の結果から、ACEを発現させた細胞にACE阻害薬を投与すると、COX-2の発現が増加することが認められた。以上の結果より、ACE阻害薬のRAS抑制非依存的効果は、ACE細胞内情報伝達活性化によって誘導されたCOX-2を介したものであると考えられる。これらの結果は、ACE阻害薬が高血圧の治療のみならず、心疾患に対するより緻密な治療法の開発に貢献することが期待される。
|