メタンフェタミン(METH)依存に対する治療方法を探索する目的で、(1)巣付き回転皿がnaive ICRマウスの一日の自発運動にどう影響するか、(2)回転皿の有無がマウスのMETHによる運動量増加、依存確立、維持にどう影響するかを検討した。マウスは、水平方向自発運動量、摂食行動(餌箱への接触回数、食餌/飲水量)、および回転皿回転数を室町機械社製自動行動観察システムで計測した。その結果、回転皿がある群は無い群に比べ有意に運動量が上昇し、餌箱への接触回数は食餌量に影響なく減少し、食餌箱への接触行動はレクレーション様であり回転皿により代替されるものであることが示唆された。次に単頭飼育3日間回転皿を経験した群としない群でその後の1.0mg/kg METHによる、運動量上昇に対する影響を3時間計測した結果、両群で有意差はなかった。さらに、午前9時にMETHを投与すると同時に、回転皿存在、あるいは非存在下において、後24時間の上述5種自発行動への影響を検討した結果、回転皿がある群は、消灯時間(午後7時から午前7時)の間の回転皿回転数が有意に減少した。naiveの対照マウスにおいては、同時間帯の回転皿の回転数は増加することから、METH処置により運動量の上昇(通常投与後3時間)が消失した後の自発運動にも影響しており、これはADHD時のアドレナリン作動薬による治療効果と酷似していた。回転皿存在下、非存在下単頭飼育もしくは集団飼育で、0.5mg/kg METHによる依存に対する影響を検討した結果、依存状態の確立には回転皿の存在は影響なかったが、5日間の体薬による依存状態の維持に対し、回転皿存在下単頭飼育群は有意に消失した。その際、抗不安検定によれば不安的因子が優位に減少したことから、回転皿は抗不安効果をもたらして依存消失を促進させたと推察し、依存状態からの治療方法の可能性を示した。
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