研究概要 |
本研究は炎症性中枢神経疾患における脳特異的な炎症細胞の浸潤が脳血管内皮細胞-脳ペリサイト間情報伝達によって引き起こされる可能性を複眼的視点から追求し、自己免疫疾患における中枢神経変性の新たな治療標的を提供することを主眼とし、平成21年度は脳ペリサイトの炎症細胞遊走因子などの液性因子産生を明らかにした。 培養したラット脳ペリサイトに炎症性サイトカインとしてTNF-αを添加し、24時間後、脳ペリサイトの全RNAを抽出した。全RNAはリアルタイムRT-PCR法を用いたRT^2 Profiler^<TM> PCR Arrayシステム(SA Biosciences社)を用いて網羅的にサイトカイン・ケモカインの遺伝子発現量の変化を調べた。 脳ペリサイトは炎症性サイトカインであるTNF-αによって、多様なサイトカイン、ケモカインを産生することが明らかとなった。なかでもCCL22,CCL5,CXCL2,CXCL1,CCL9,CCL20,CCL7,CXCL6,CCL2は40倍以上も増加した。平成22年度は脳ペリサイトが脳血管内皮細胞上の接着因子発現に及ぼす影響や炎症細胞遊走を惹起するかを検討する。以上、TNF-αは脳血管内皮細胞からも産生されること、血液脳関門を透過し、末梢から中枢へと移行することを考え合わせると、この知見は炎症性病態下における脳内のサイトカイン、ケモカイン発現量増大に脳ペリサイトの関与を示唆するものである。
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