研究課題
本研究の目的は、酸化LDL受容体であるlectin-like oxidized LDL receptor (LOX-1)の働きを解明していくことである。血管病変を引き起こす病態下で特徴的に内皮細胞に働いてその機能変化を導き、ひいては病態全体に影響を与える分子について、LOX-1との関連を中心に、その意義を明らかにする。酸化LDL受容体は、血管内皮細胞の病的な機能変化を媒介する分子として考えられている。本研究では、LOX-1とC-reactive protein (CRP)の相互作用を調べている。炎症マーカーとして古くから使われていたCRPは、近年、虚血性心疾患の予測因子として注目されている。そして、CRP自体が作働物質として働き、血管病変、endothelial dysfunctionを引き起こすという報告が集まってきている。これまで我々は、LOX-1とCRPが結合することを明らかにし、LOX-1発現が顕著に亢進しているSHR-SPラットを用いて、LOX-1とCRPの結合によって引き起こされる血管透過性亢進を観察してきた。今回、CRPの作用の1つとしてCRPとLOX-1による補体系活性化をin vivo、in vitroで明らかにした。CRPを皮内投与し、血管透過性亢進の起こったSHR-SPラット皮膚組織の解析を行った。CRPの投与による補体系活性化の亢進がみられ、それによって引き起こされる白血球の浸潤を観察した。CRPによる補体系活性化は、補体系活性化によって生じるC3dを免疫組織化学によって検出した。CRPとLOX-1による補体系活性化は、LOX-1固相化プレート、LOX-1発現細胞を用いた実験でも検出された。酸化LDLの受容体LOX-1は、CRPとも相互作用していることがわかった。LOX-1をブロックすることで、酸化LDLだけではなく、CRPによる作用も抑制し、endothelial dysfunctionを防ぎ、虚血性心疾患などの心血管病の発症、進行を抑制、遅延させることが期待される。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件)
Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci
巻: 87(3) ページ: 104-113
J Hypertens
巻: 28(6) ページ: 1273-1280
Lipids
巻: 45(4) ページ: 329-335
Clin Chem
巻: 56(4) ページ: 550-558