研究課題
悪性腫瘍の9割は上皮組織に由来する。すなわち上皮細胞形成・維持機構の研究は、癌化の分子機構解析にも結びつくものである。本研究では、癌化の初期における上皮多層化現象が、重層上皮組織(皮膚表皮等)の形成分子機構と類似している点に着目し、両現象に共通に発現する事が明らかになりつつある「機能未知分泌蛋白質Dermokine」の重層上皮組織と癌細胞における生理機能の解明を行う。それら両側面から得られた知見を統合する事により、癌に対する新規診断薬、新規創薬標的の同定へと結びつける。本年度は、早期大腸癌には、Dermokineの各アイソフォームDermokine-β、γが発現しているという昨年度の知見を基に、大腸癌患者血清において、既に構築済みであったSandwitch ELISA法による血清検査を行い、早期癌腫瘍マーカーとして有効である事を証明し、論文に投稿・掲載された。(Tagi and Matsui et al., J.Gastroenterol,2010)この事実は、癌化初期における上皮多層化に伴ってDermokineの分泌が血中に反映されている事を示し、これまでの仮説を裏付けるものと考えられる。また新たな重層上皮特異的分子であり、かつ消化器癌に発現する分子として、蛋白質分解酵素SASPaseを想定し、まずは、重層上皮における機能解析を行った。引き続き、SASPaseに関しても消化器癌において早期癌マーカーとしての応用が可能かどうかを検討している。
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Journal of Gastroenterology
巻: 45 ページ: 1201-1211
http://www.tmd.ac.jp/mri/mtt/mtt.html