研究課題
幹細胞からステロイドホルモン産生細胞を分化誘導することは、ステロイドホルモン産生器官の再生治療法の開発にむけて、非常に重要である。私は、これまでの研究で、成人からも採取可能な間葉系幹細胞に、転写因子のSF-1やLRH-1を導入することにより、生殖腺や副腎のステロイドホルモン産生細胞を分化誘導することに成功している。今年度は、間葉系幹細胞における実験結果に基づいて、より再生医療への応用性が高い胚性幹(ES)細胞をステロイドホルモン産生細胞へと分化させることを試みた。ES細胞に、SFL1やLRH-1を導入した場合、増殖が停止して、やがて細胞は死んでしまう。そこで、テトラサイクリン依存性に目的遺伝子を発現させることができるマウスES細胞株・EBRTcH3を用いて、ES細胞を間葉系幹細胞に分化誘導した後に、SF-1を発現させた。コラーゲンコートしたシャーレ上で培養した後に、レチノイン酸を添加するとES細胞は間葉系幹細胞に分化するが、この状態でSF-1を発現させたところ、細胞は生存して、副腎皮質束状層様のグルココルチコイド産生細胞へと分化した。この細胞は、ACTHレセプターを発現しており、ACTHに反応して、ステロイドホルモンの産生が上昇した。これらの成果は、万能細胞から自律的にステロイドホルモン産生する細胞を分化させた世界で初めての報告である(Yazawa et al., 2011)。今後は、このES細胞由来のステロイドホルモン産生細胞を用いることにより、遺伝子治療も含めたステロイドホルモン産生器官の再生治療の道が切り拓かれることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件)
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