研究課題
PeriplakinはPlakinファミリーに属する巨大な棹状の分子であり、細胞接着複合体と細胞内骨格とを結びつけるリンカー分子として機能すると考えられる。しかしながら、同分子が皮膚以外の組織において果たしている実際の役割や機能については、ほとんど明らかにされていない。本研究では最初に同分子の肝臓における発現制御を詳細に調べることによって、同分子が肝臓において担う役割を解明するための手がかりを得ようと試みた。種々の外的あるいは内的な因子によりどのような発現制御を受けるのかを、マウス個体等を用いて解析したところ、同分子の発現は胆汁酸を内因性リガンドとする核内受容体型転写因子FXR (Farnesoid X receptor)を欠損するマウスの肝臓において有意に減少しており、逆にFXRリガンドである胆汁酸の混餌投与を行なうと劇的に増加した。興味深いことに、同分子の発現亢進は、胆汁酸の混餌投与以外の様々な手法により惹起された胆汁鬱滞性肝炎においても認められた。さらに、免疫組織学的解析の結果から、同分子の発現は肝臓に存在する多くの細胞種のうち、肝細胞および胆管上皮細胞といった、高濃度の胆汁酸に暴露される細胞において強く発現することが分かった。以上の結果から、同分子は肝臓において胆汁酸に関連する重要な役割を果たしている可能性が示唆された。培養細胞を用いた解析では、マウス個体で見られたような劇的な変化を観察するにはいたっておらず、培養条件の検討が必要であると考えられた。本年度はさらにPeriplakinの機能を生体内で直接検討するために、Periplakinノックアウトマウスの作製と、肝細胞においてPeriplakinを過剰発現するトランスジェニックマウスの作製を開始した。前者については、ほぼ完成しており、後者については現在候補個体の選別を進めているところである。
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