PeriplakinはPlakinファミリーに属する、生体内での生理的役割が未解明の分子である。本研究では初年度から2年目にかけて、Periplakinが肝細胞に於いて、胆汁鬱滞性肝炎特異的な、著しい発現昂進や、特徴的な細胞内蓄積を示すことを明らかにし、C57BL/6Jへの戻し交配を十分に行うことによって遺伝的背景を純化したPeriplakinノックアウトマウスを作製することに成功した。最終年度である、平成23年度においては、C57BL/6Jへの戻し交配を十分に行うことによって遺伝的背景を純化したPeriplakinノックアウトマウスを用いて、Periplakinと胆汁鬱滞性肝炎との連関を、生体内で直接検討した。コール酸投与や、総胆管結紮によってPeriplakinノックアウトマウスに胆汁鬱滞を惹起させ、野生型マウスとの反応性の違いを、組織傷害や遺伝子発現解析を指標として詳細に検討したところ、Periplakinノックアウトマウスと野生型マウスでは、総胆管結紮後の、比較的早い時点での肝臓において、組織の構造維持や修復等に関わる遺伝子の発現等が大きく異なっており、その結果、細胞保護機能に有意な違いが見られることが分かった。これらの結果から、Periplakinは肝臓の恒常性維持に関わる、新しい重要な分子である可能性が示唆された。癌化とPeriplakinとの関係性については、in vivo解析系の整備を一定段階まで進めることは出来たが、結果を得るところまでは至らなかった。
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