研究課題
近年の分子生物学を駆使した脳研究により、神経回路形成に関わる遺伝子発現パターンが明らかになりつつある。一方、神経発生・成熟期における電気的性質はダイナミックに変化するということがさまざまな神経細胞を対象とした研究で報告されている。しかしながら、電気的性質変化の神経回路形成に果たす役割は不明な点が多い。本研究の目的は、膜電位の変化がどのように神経発生・成熟を調節しているのかを分子生物学的、電気生理学的に解析し、神経ネットワーク構築メカニズムを明らかにすることである。平成22年度は、(1)これまで樹状突起の剪定からシナプス形成に至る形態変化の過程は不明であった。そこでスライス器官培養系における長時間のタイムラプス観察系を確立した。即ち、メンブレン上で培養された小脳スライスを正立顕微鏡下でタイムラプス観察系をできる系を立ち上げた。小脳スライスは生後6日齢マウスから作製し、リポフェクションにより小脳顆粒細胞にGFP発現ベクターを導入した。タイムラプス観察の結果、樹状突起の剪定からシナプス形成に至る樹状突起の形態変化の過程が明らかになった。(2)また、平成21年度に薬理学的に同定した樹状突起剪定に関わる細胞内シグナル伝達分子、および、細胞骨格の制御に関わる複数個の細胞内シグナル伝達分子について、それぞれドミナントネガティブ体を作成し、スライス器官培養系において小脳顆粒細胞に導入した。その結果、一部のドミナントネガティブ体で樹状突起の剪定が阻害され、樹状突起の剪定に関わる細胞内シグナル伝達分子が明らかになった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J.Neurosci.
巻: 30 ページ: 5677-5689