研究概要 |
ヘリコバクターピロリ病原因子CagAによる発癌分子機構の解析を進め、以下の結果を得た。 1.東アジア型CagAならびに欧米型CagAをそれぞれ発現する遺伝子導入マウスの解析から、SHP-2活性化能が低い欧米型CagAの発癌活性は東アジア型CagAよりも有意に低いことを見出した。本研究の結果はCagAを起点とした発癌分子メカニズムにおいて、SHP-2の異常活性化が重要な役割を担う可能性を示すものであり、また、我が国で胃癌が多発する一因として高病原性CagAを保有するピロリ菌の蔓延を示唆する。 (Miura et al., Int J Cancer, 2009) 2.胃発癌における上皮細胞極性崩壊の寄与を検討するため、cagA遺伝子導入マウスとPAR1b遺伝子欠損マウスならびにLKB1遺伝子欠損マウスの大規模な交配実験を進めている。現在、それぞれのマウスを長期飼育し、胃病変発症の量的・質的差異の解析を進めている。 3.CagAによる胃発癌機構におけるSHP-2活性化の重要性を最終的に明らかにするため、リン酸化耐性型cagA遺伝子導入マウス(RAR1と複合体を形成する一方、SHP-2とは複合体を形成しないCagA変異分子を発現するマウス)と活性獲得型SHP-2ノックインマウスを交配し、経時的観察を進めている。リン酸化耐性型cagA遺伝子導入マウスは腫瘍を形成しない。従って、リン酸化耐性型CagAと活性獲得型SHP-2の共発現により腫瘍形成が認められた場合、発癌におけるSHP-2活性化の重要を個体レベルで明らかにすることができると考えている。
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