研究概要 |
これまでに上皮細胞の接着維持におけるCADM1の動態を調べる目的で、蛍光蛋白質との融合蛋白質として発現させたCADM1を用いてFRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)解析を行ってきた。その結果、接着面に局在する野生型のCADM1は、約50%が数分のうちに入れ替わること、さらに細胞内領域のprotein4.1およびMAGuKs結合領域に点変異を持つCADM1では、その動態が元進し、CADM1の細胞膜上での安定性に影響を及ぼすことが示された。本年度は、CADM1の細胞内領域に形成される複合体の安定性を調べる目的で、CADM1の細胞内領域に結合する裏打ち蛋白質群であるprotein4.1BおよびMPP3の動態を解析した。すると予想に反して、これらの結合分子はCADM1よりも動的であることが示された。またFLIP(Fluorescence Loss in Photobleaching)法を用いて、これらの分子の輸送路と考えられる領域を退色し続けた結果、CADM1,4.1B,MPP3はいずれも細胞内から接着面に移動するよりも、むしろ接着面の細胞膜あるいは細胞膜直下を主に移動することが示された。これらの結果から、安定した接着面においてもCADM1自身およびその複合体は常に動的であり、多くが入れ替わりながら接着を維持していることが明らかになった。またprotein4.1およびMAGuKsは、接着面の細胞膜直下での入れ替わりが主であることから、おそらく他の接着分子とも結合する、裏打ち蛋白質同士が結合する、あるいは細胞骨格に結合することで常に一定以上の分子が細胞膜直下に貯蔵されていると考えられる。以上の結果から、CADM1複合体は動的に制御を受け、細胞間接着の維持に寄与することが示唆された。
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