本年度は(1) ΔJM-Metノックインマウスを用いた発生過程における形態形成の異常の解析および、(2) JMドメイン欠損変異Met発現MDCK細胞を用いたシグナル活性化制御の生化学的とコラーゲンゲル内形態形成(管腔形成)を指標とする細胞生物学的解析に取り組んだ。 (1) ΔJM-Metノックインマウスは、ホモ欠損の場合、臓器形成不全により胎生致死あるいは生後まもなく死亡することが分かった。一方、ヘテロ欠損の場合、正常に生まれ、WTマウスと観察した限りにおいて違いは認められなかった。今後、より詳細な組織解析と生化学的解析を行うことで、MetのJMドメインを欠損することがどのようなメカニズムにより臓器形成不全に至らしめるのかを明らかにする。 (2) WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域とTrk/NGF受容体の細胞外領域とを融合させたキメラ蛋白質(Trk-Met)を発現させるベクターの構築を行った。それらを遺伝子導入して、WT MetあるいはJMドメイン欠損変異MetのTrk-Metを永久発現するMDCK細胞をそれぞれ得た。さらにNGFを添加すると、上記細胞がスキャッターする現象が確認され、この時、それぞれの細胞において発現するTrk-Metがリン酸化されることを確認した。今後、コラーゲン包埋された上記細胞にNGFを添加したとき、Metシグナル特有の生物活性である管腔形成が認められるか否かを確認する。
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