本年度は前年度に引き続き(1)ΔJM-Metノックインマウスを用いた発生過程における形態形成の異常の解析および、(2)JMドメイン欠損変異Met発現MDCK細胞を用いたシグナル活性化制御の生化学的とコラーゲンゲル内形態形成(管腔形成)を指標とする細胞生物学的解析に取り組んだ。 (1)ΔJM-Metノックインマウスは、ホモ欠損の場合、臓器形成不全により胎生致死あるいは生後まもなく死亡することが分かった。詳細な解析の結果、ΔJM-MetノックインマウスはExon-13を欠損することにより、c-Met遺伝子のプロモーター機能の低下が起こり、Met蛋白質の著しい発現低下が引き起こされることが明らかとなった。このことによりHGF-Metシグナルの重要な役割の一つである胎盤形成がうまく行われず、発育不全による胎生致死となることが明らかとなった。 (2)WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域とTrk/NGF受容体の細胞外領域とを融合させたキメラ蛋白質(Trk-Met)を永久発現するMDCK細胞をそれぞれ得た。これらはともにNGFを添加すると、スキャッターする現象が確認され、この時、Trk-Metのチロシン残基がリン酸化されることが確認された。そこで、コラーゲン包埋された上記細胞にNGFを添加したところ、ともにHGF-Metシグナル特有の生物活性である管腔形成が認められた。以上の解析結果において何れもWTとJMドメイン欠損変異の間に際立った違いは認められず、本研究課題である、JMドメイン欠損変異MetにおいてHGF-Metシグナルが亢進されるという仮説を立証するには至らなかった。
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