研究概要 |
MYCNと協同して神経芽腫の発がんに関わるであろう候補遺伝子として当初Cdc25Cに着目していたが、他の研究室から「MYCNが発現している神経芽腫の細胞株においてCdc25Cは過剰発現しているものの、Cdc25CをノックダウンしてもMYCNに依存した細胞増殖には差がない」ということが報告された(Cancer Cell, 2009,15,67-78)。そのため、再びマウス神経芽腫モデルを用いたマイクロアレイのデータを再検討し、細胞分裂時の正常な染色体分配に必要なShugoshin 1 (Sgo1)及び染色体の凝集に必要なコンデンシンのサブユニットであるStructual maintenance of chromosome 2 (Smc2)の二つの細胞周期関連因子を新たな候補遺伝子とした。 正常マウス及びMYCNトランスジェニックマウス(神経芽腫モデルマウス)において神経節細胞を用いたRT-PCRを行ったところ、マイクロアレイと同様に正常マウスからの細胞では発現が上昇していないが、モデルマウスの細胞ではそれらの遺伝子の発現が上昇していることが確認された。また、ヒト神経芽腫の細胞株においてSgo1およびSmc2の発現を確認したところ、MYCNが増幅している細胞株(IMR32,SK-N-BE,NB39)においては発現が多いのに対し、MYCNが増幅していない細胞株(SK-N-AS)においては発現が少ないことが確認された。すなわち、MYCNの発現に依存してこれらの遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。さらに、sh RNAを発現するベクターをレンチウィルスを用いてヒト神経芽腫細胞株に感染させSgo1をノックダウンしたところ、MYCNが増幅している細胞株では細胞増殖の速度が低下し、MYCNが増幅していない細胞株では速度に変化はないという予備的な結果が得られている。また、EMBLで公開されているヒト神経芽腫患者の発現データ及び予後のデータから、Smc2の発現はMYCNの発現と協同して患者の予後に影響があるという結果が得られている。 これらのことから、Sgo1やSmc2はMYCNと協同して神経芽腫の増殖速度や予後に関与する因子であると考えられる。
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