H21年度までに神経芽腫モデルマウスであるMYCNトランスジェニックマウスにおいてがんの進行とともに発現が上昇し、ヒト神経芽腫細胞株においてMYCN増幅タイプのものでのみ発現が高く、MYCNの高発現と合成致死表現型を示す遺伝子として、Sgo1とSmc2を同定していた。 H22年度では、Sgo1をノックダウンすると、MYCN増幅タイプの細胞でのみG2/M期の細胞が増加し、DNA損傷のマーカーであるγ-H2AX陽性細胞が増加し、老化の指標であるSA-β-GAL陽性細胞が増加していた。 一方、Smc2をノックダウンすると、細胞周期には変化が見られなかったが、MYCN増幅タイプの細胞でのみγ-H2A陽性細胞が増加し、アポトーシスの指標であるTUNEL陽性細胞が増加していた。 Sgo1と協同して働くと報告があるPP2Aの阻害剤(オカダ酸)を用いて同様の実験を行ったところ、MYCN増幅タイプの細胞の細胞の生存率が低下することがわかった。また、公開されている神経芽腫母者の発現アレイのデータおよび予後データを再解析したところ、Sgo1はMYCN増幅タイプの癌の予後に直接影響はしていなかったものの、コヒーシンのサブユニットであるSmc3はMYCN増幅タイプの細胞でのみSmc3の高発現の患者の予後が悪かった。 以上のことから、Smc2がMYCNと合成致死表現型を示すのはDNA損傷によるアポトーシス誘導によるものであること、Sgo1がMYCNとSyntheticな表現型を示すのはDNA損傷により、細胞死ではなく細胞老化が誘導されて細胞増殖の停止がおこるためであることが明らかとなった。また、Sgo1とMYCNとのSyntheticな細胞老化誘導においても、PP2Aやコヒーシンを介して表現型を示している可能性が示唆された。
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