平成21年度に引き続き、日本白色種ウサギ授精卵へのマイクロインジェクション実験を行った。61羽のドナーウサギから採取した922個の受精卵の雄性前核内にヒトアポリポ蛋白CIIIの発現コンストラクトをマイクロインジェクションした。35羽の仮親ウサギの卵管内に846個の胚を移植して7羽が妊娠したが、出産に至ったのは4羽だけであった。これらの仮親から6匹の仔ウサギが得られたが、5匹は死産であった。PCR法による遺伝子解析では、死産した5匹のうち1匹にヒトアポリポ蛋白CIII遺伝子の導入が確認された。 現在のところ要する時間の短縮、遺伝子導入確率の向上を促す方法はなく、産仔を多く得ることが最も必要である。今回の実験においては仮親の妊娠率が低く(20%)、また妊娠が確認されても胎仔が順調に発育せずに出産に至らない例が多かった。その理由については不明であるが、21年度の実績からDNA液に原因があるとは考えられず、卵の質もしくは仮親の生殖能に問題があった可能性が考えられた。遺伝子組換えウサギの作製にあたっては、出来るだけ遺伝背景を揃えるために、同一のコロニーのウサギを用いるのが望ましく、ドナーウサギを変更することは出来ないが、仮親とするウサギを他のコロニーから導入した。最近では妊娠率が上昇傾向にあるので、23年度も繰り返しマイクロインジェクションを行い、遺伝子組換えウサギを得る。 遺伝子組換えウサギが得られれば、血液中のapo CIII蛋白を免疫比濁法により定量する。得られたヒトヒトアポリポ蛋白CIII遺伝子組換えファウンダーウサギがオスであれば精液を採取し、複数の正常メスウサギに人工授精を行う。これにより自然交配よりも効率的にウサギ(F1)を繁殖することが可能である。得られたファウンダーウサギがメスのみであれば、日本白色種オスウサギと交配し、F1の遺伝子はオスウサギを得た後に繁殖(F2)を進める。
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