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2009 年度 実績報告書

癌抑制遺伝子Rbの上皮細胞における機能と癌の浸潤・転移機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 21790326
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

有馬 好美  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20309751)

キーワード癌抑制遺伝子 / Rb / 癌 / EMT / 浸潤・転移
研究概要

Rb遺伝子は遺伝性網膜芽細胞腫の原因遺伝子として単離されたが、その後の膨大な研究により遺伝性の腫瘍だけでなく肺癌、乳癌、膀胱癌、前立腺癌などの一般的な腫瘍においても異常が見られる。とくに悪性度の高い癌においてRbタンパク質の発現異常が指摘されており、癌細胞の低分化度・高増殖能・高転移能との関連性が示唆されている。Rbは転写因子E2Fと結合しその転写活性を抑制することで細胞周期を負に制御する重要なタンパク質である。Rbがサイクリン依存性キナーゼによってリン酸化されて不活化型になると、E2Fとの結合が解除され細胞周期はG1期からS期へと進行するため、Rbが不活化している癌細胞は高い増殖能をもつと考えられている。Rbの不活化が発癌や癌細胞の増殖に関与することはよく知られているが、癌細胞の浸潤・転移能との関連はあまり明らかになっていない。私たちは、上皮性ヒト乳癌細胞においてRbの発現を抑制すると、上皮問葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)様の著しい形態変化が誘導されることを報告した。EMTとは上皮細胞が間葉系様細胞に形質変化する現象であり、運動能の亢進や細胞外マトリックスの産生量の亢進をもたらすことから癌の浸潤・転移のプロセスに関与することが示唆されており、近年その関与が明らかにされつつある。発現減少あるいはリン酸化によるRbの不活化が、細胞周期停止機構の破綻によって高増殖能を示すだけでなく、EMTを誘導することによって浸潤・転移にも影響を及ぼして癌の悪性化に関わっている可能性がある。そこで、Rbが関与するEMT誘導作用の分子背景を明らかにすることを目的として本研究を行い、Rb不活化によって転写因子ZEB1の発現が上昇しEMTが誘導されることを見出した。ZEB1高発現の乳癌は低発現の乳癌と比較して予後不良であることが報告されており、ZEB1の発現を抑制することが予後不良の乳癌に対する治療戦略となる可能性が示唆された。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Breast cancer stem cells.2010

    • 著者名/発表者名
      甲斐千晴、有馬好美、神谷敏夫、佐谷秀行
    • 雑誌名

      Breast Cancer Vol.17

      ページ: 80-85

  • [雑誌論文] Decreased expression of neurofibromin contributes to epithelial-mesenchymal transition in neurofibromatosis type 1(NF1).2009

    • 著者名/発表者名
      有馬好美、林秀美、鎌田加奈子、後藤孝明、佐々木美香子、倉持朗、佐谷秀行
    • 雑誌名

      Experimental Dermatology

      ページ: Epub ahead of print

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 上皮間葉転換と癌浸潤転移2009

    • 著者名/発表者名
      有馬好美、神谷敏夫、佐谷秀行
    • 雑誌名

      細胞工学 Vol.28

      ページ: 655-658

  • [学会発表] 癌におけるRb不活化に基づく上皮間葉転換(EMT)誘導2009

    • 著者名/発表者名
      有馬好美、佐谷秀行
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド
    • 年月日
      2009-10-21

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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