悪性度の高い癌に高発現している膜タンパク質であるEMMPRINは、細胞表面でモノカルボン酸輸送体(MCT)と複合体を形成している。EMMPRINと複合体を形成するMCTにはMCT1とMCT4の2種類が知られており、癌細胞内でつくられた乳酸を細胞外へ排出していると考えられているが、これらの複合体の機能的な違いについては理解が進んでいない。そこで本研究では、これらの複合体の機能的な差違を明らかにし、その違いが癌細胞の転移・浸潤過程に与える影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は、EMMPRIN-MCT複合体の機能を、抗癌剤としての利用が期待されている乳酸類似体(3-ブロモピルビン酸)に対する感受性を指標として解析した。前立腺がん細胞PC-3では、MCT1の量を減少させた場合やその機能を阻害した場合には、3-ブロモピルビン酸に対して感受性を示していた細胞が抵抗性を示すことが明らかになった。また、MCT1と複合体を作っているEMMPRINの量を減少させた場合にも3-ブロモピルビン酸に対して抵抗性を示すことが明らかになった。これらの結果はMCT1とEMMPRINの複合体が3-ブロモピルビン酸の細胞内への取り込みに関与していることを示唆している。3-ブロモピルビン酸は乳酸の類似体であることから、この複合体は細胞外に排出された乳酸を細胞内に取り込む役割を果たしていると考えられる。
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