本年度は、EMMPRIN-MCT複合体機能解析のためのタンパク質誘導発現システム(染色体上の特定の部位に遺伝子を挿入することが可能であり、そこから作られるタンパク質の発現量も制御することが可能なシステム)を構築した。また、MCT1が発現していない乳がん細胞株(MDA-MB-231)に対してこのシステムを導入した。このシステムを用いることでEMMPRIN-MCT複合体の機能が詳細に解析することが出来る。解析は現在継続中である。 一方、細胞内でEMMPRINタンパク質の量を減少させるとMCT1とMCT4のタンパク質も同様に減少することを見出した。この際、各MCTのmRNA発現量に変化が無いため、その減少はタンパク質分解によるものであると考えられる。一般的に膜タンパク質の品質管理は小胞体での糖鎖修飾によって制御されているが、MCT1とMCT4には糖鎖修飾が起きないことがわかっている。このような糖鎖修飾されない膜タンパク質の品質管理に関しては不明の点が多く、その解明は今後の課題である。 卵巣がん細胞株(A2780、A2780ADR)を用いた解析から、MCT1が高発現している細胞株で乳酸類似体である3-ブロモピルビン酸に対する感受性が高いことを見出した。また、抗がん剤が効きにくい低酸素環境下で3-ブロモピルビン酸の殺細胞効果が高まることを確認した。
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