我々が新規癌関連遺伝子として同定したKRAPの分子機能は不明であった。癌でのKRAP発現亢進状態を模したモデルの樹立と、それを利用した表現型解析・分子機能解析が、KRAPの生理的・病理的意義を明らかにする上で重要であると考えられる。昨年度に樹立したKRAP遺伝子発現亢進マウスを利用して、本年度においてKRAP結合蛋白の同定と同相互作用の機能的意義の端緒を明らかにした。 1:KRAP結合蛋白の同定 KRAPトランスジェニックマウスの肝臓を材料に用いた共精製法にて、KRAP結合蛋白質としてシグナル関連分子(X分子)の同定に成功した。KRAPおよびX分子に対する特異抗体による検討で、細胞内・組織内共局在と会合を証明した。 2:KRAP-X分子間相互作用の機能的意義に関する解析 癌細胞においてKRAP発現抑制を施して、そのX分子機能に対する効果を検討した。複数種の癌細胞株において、KRAP発現抑制はX分子機能を抑制したことから、KRAPがX分子機能を正に制御する分子であることを明らかにした。 KRAP結合蛋白に関しては世界的に未聞であり、KRAP分子機能の理解に繋がる大きな成果であると考えられる。X分子は正常組織・発生・分化・癌などにおいて多岐の生命現象に関与する細胞内シグナル制御分子であるため、将来的に行われるKRAP-X分子間相互作用に関する研究がもたらす成果の波及効果は大きい。
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