急性骨髄性白血病(AML)は成人で最も有病率の高い白血病であり、抗がん剤による寛解導入療法に失敗すると、死の転機を辿るケースが多い。抗がん剤投与がAMLの根本治癒に繋がりにくいのは、AML、幹細胞が抗がん剤に高い抵抗性を示すことが原因と考えられる。従って、AMLを克服するには、AML幹細胞固有の細胞現象を捉え、それら現象の基礎となる分子を同定し、全く新しい治療の標的を見出す必要がある。本研究はAML幹細胞特異的なスプライシングパターンを全ゲノムスケールで休系化し、AML発症における役割や分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度はまず、CD34^+CD38^-画分(幹細胞)およびCD34^+CD38^+画分(分化した細胞)からRNAを抽出し、微量サンプル増幅系でcDNAを調製し、Affymetrix社のエクソンアレイで発現データを得た。これらをPartek社のプログラムと研究者の構築した手法で解析した。その結果、AML CD34^+CD38^-細胞がおよびCD34^+CD38^+に分化する際にエクソン発現パターンが変化する遺伝子を47同定した。中でも30については健常検体の分化反応には有意に変動しておらず白血病化への役割が考えられた。さらにこれら30遺伝子についてqRT-PCR解析を実施し、発現を確認した。候補遺伝子についてGene Ontologyターム解析を行ったところ複数の受容体や転写因子が含まれており白血病の発症との関わりが考えられた。In situハイブリダイゼーションによる組織分布の確認と、発現ベクターを遺伝子導入したモデル化細胞を用いた機能餌析は準備段階に留まった。
|