急性骨髄性白血病(AML)は成人で最も有病率の高い白血病であり、抗がん剤による寛解導入療法に失敗すると、死の転機を辿るケースが多い。抗がん剤投与が肌の根本治癒に繋がりにくいのは、AML幹細胞が抗がん剤に高い抵抗性を示すことが原因と考えられる。従って、AMLを克服するには、AML幹細胞固有の細胞現象を捉え、それら現象の基礎となる分子を同定し、全く新しい治療の標的を見出す必要がある。本研究はAML幹細胞特異的なスプライシングパターンを全ゲノムスケールで体系化し、AML発症における役割や分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。前年度Affymetrix社のエクソンアレイで同定したAML幹細胞分化時のみに変動のみられた30遺伝子のエクソン発現パターンをqRT-PCR法で確認解析を重ねたところ、偽陽性率が想定以上に高かった。また調べたAML6検体の中でも検体間のばらつきが大きく、共通にスプライシング異常のみられる遺伝子は無かった。しかし複数の検体で差のみられる機能分子が複数見出せたのでそれらのレンチウイルス発現ベクターを構築した。また併行し、AML幹細胞と正常幹細胞の間でエクソン発現パターンに差のみられる遺伝子をエクソンアレイで調べ、161程度の差のある遺伝子を見出し、この中でも有望なものについて発現ベクターの作製に入った。本年は所属機関の移動に伴うセットアップのため、計画が大幅に遅れた。
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