研究課題
チェルノブイリ原子力発電所事故後の放射線被曝による最も深刻な問題は、周辺住民、特に乳幼児に集中して発生した甲状腺がんである。放出された放射性物質の一つに半減期が短いヨード131があるが、ヨードは甲状腺に蓄積される性質があり、汚染された食品の摂取による内部被爆が甲状腺がんが激増した原因になったと考えられている。我々は放射線誘発甲状腺がんの発症リスクに関与する遺伝因子を同定するため、61万個のSNPマーカーを搭載したSNPアレイを用いて全ゲノム関連解析(GWAS)を開始した。2セットのDNA検体群を用いた全ゲノム関連解析で、9q22にゲノムワイドで有意となる領域のほか、9p、12p、等複数の候補領域が再現性良く検出された。そのうち9qの候補領域には非放射線誘発甲状腺がんの感受性遺伝子FOXE1が含まれており、統計解析においてp=4.8x10-12と極めて強い関連が得られた(Takahashi et al, 2010)。本年度は9p、12p領域に焦点をあてて、さらなる検体群を用いた再現性検証を行い、新たな感受性遺伝子の同定を試みる。さらに各候補遺伝子の主要ハプロタイプ(頻度5%以上)を決定し、生物学的機能に影響を与える一塩基多型を特定する。また、生化学的、細胞生物学的解析で、遺伝子多型と発がんの関連を明らかにする。
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Human Molecular Genetics (Epub)
ページ: doi : 10.1093/hmg/ddq123