BRCA1、BRCA2がん抑制遺伝子は、放射線や化学物質によるDNA損傷に応答し、その修復に関与する重要な核内因子であり、その片アレル変異によって「家族性乳がん」の原因となることが知られている。しかし、両遺伝子の変異で乳がん発症が説明でるのは「家族性乳がん」半数程度であり、残りのほとんどの症例の原因遺伝子はいまだ明らかではない。本研究では、これらの疾患の新規原因遺伝子の同定を目標に、ニワトリDT40細胞株をモデル系としてBRCA1とBRCA2の遺伝子座終止コドンにエピトープタグをノックインした細胞株を作成し、抗体ビーズによりプルダウンした免疫沈降物中の新規成分をマス解析で同定することを試みる。さらに、その機能は同定因子のノックアウト細胞の作成により検証する。 本年度、具体的に実施した内容は、まずニワトリゲノムデータベースのBRCA2の配列情報からFLAGとHAのダブルタグのBRCA2遺伝子C末へのノックインベクターを作成した。親細胞としては、タモキシフェン添加により核へ移動し活性化されるMer-Cre-Mer蛋白質を発現するDT40Cre1細胞を用い、トランスフェクトして合計4種類のBRCA2-HA-FLAGノックイン細胞を作成した。Mer-Cre-Merは変異型エストロジェン受容体リガンド結合ドメインによってCre組換え酵素を挟み込んだもので、エストロジェンアナログであるタモキシフェンによって非常に効率よく制御できる。ノックインに使用した薬剤選択マーカーを容易に除去できる。この細胞を使って、今後BRCA2複合体の精製を行う予定である。
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