1、MeCP2による骨形成制御機構の解明 MeCP2欠損マウスは精神遅滞を示すレット症候群のモデルマウスである。骨形成におけるMeCP2の役割を解析するにあたっては、その精神遅滞が発症する前に解析する必要がある。なぜなら、精神遅滞の発症により運動が制限され、そのことが骨の性状に影響している可能性を否定できない為である。今年度は、さらに解析する2週齢のマウスを増やし、HE染色にて大腿骨組織を解析した。その結果、野生型と比べて、骨芽細胞と破骨細胞の形成に異常は認められず、また骨組織も正常に形成されていた。つまり、MeCP2は骨芽細胞と破骨細胞への分化と骨形成機構に重要でないことが分かった。 2、癌の浸潤とMeCP2欠損線維芽細胞 癌細胞において、腫瘍抑制遺伝子のDNAメチル化による遺伝子発現抑制はよく知られている。MeCP2は、そのDNAメチル化を認識し、その抑制を確立するのに必要な一つの因子である。しかしながら、癌間質におけるMeCP2の役割は知られていない。そこで、新生仔の皮膚から野生型とMeCP2欠損線維芽細胞を樹立した。これらの細胞を用いて、MeCP2欠損線維芽細胞がマウスメラノーマ細胞の浸潤に与える影響を、今年度は種々のinvasionassayにより解析した。結果、どの方法においても野生型とMeCP2欠損線維芽細胞間で有意な差を見いだせなかった。 3、皮膚組織におけるMeCP2の役割 MeCP2(-/+)雌とMeCP2欠損の雄は、高齢になると潰瘍様の皮膚病変を発症することを見いだした。この病変を病理学的に解析したところ、上皮の基底膜層を欠如していた。この病変は、その後重篤になるため、うまく治癒機構が働いていないことが示唆される。
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