研究概要 |
Textile Plotの集団遺伝学的解釈,ソフトウェア開発そしてTextile Plotによる実データ解析の3つの側面から研究をおこなった.まずTextile Plotの幾何学的性質とSNP(Single Nucleotide Polymorphisms,一塩基多型)の連鎖不平衡との関係を数学的に与え,さまざまなデータに適用することで,数十から数千座位におよぶ連鎖不平衡の様子が直感的に理解可能であることを示した.またTextile Plotはあらゆるモデルを仮定せずに直接SNPを表示することから,背後に存在するハプロタイプ構造も連鎖不平衡と同時に眺めることが可能であることが示された.この成果をもとに,実際の臨床データを用いた解析もおこなった.具体的にはBioBank Japanに登録されているB型肝炎の症例対照群から得られたSNPデータにTextile Plotを適用し,原因遺伝子周辺に存在する強い連鎖不平衡構造を明らかにするとともに,HLA-DP遺伝子のExon2に存在するいくつかの塩基の組で表されるHLA多型とSNP多型の混在するハプロタイプが疾患に関連していることが一目で理解可能であることを示した.また同時に,国際HapMap計画が提供する11人種のSNPデータを用いた解析では,白人集団のLCT遺伝子近傍においてLong-Rangeハプロタイプの存在およびハーディー・ワインバーグ平衡からの乖離が示唆され,優性選択の痕跡を探索する一つの方法としてTextile Plotが有効であることが示された.この成果は現在論文としてPLoS Oneに投稿中である.またソフトウェアはマルチプラットフォームのJAVA言語によって構築し,インターネット(http://stat.math.keio.ac.jp/TextilePlot/Genetics/)において公開をはじめた.
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