腫瘍組織は種々の組織亜型に分類され、その特徴に基づいて検討が行われている。最も重要な研究領域の一つである乳癌においては、既存の病理学的分類とは異なるmolecular subtypeと呼ばれる分類があり、そのうちの一つとしてbasal-like subtypeが挙げられる。HER2-/ER-などの発現パターンを示すbasal-like subtypeの臨床上の問題点には、予後不良であること、ホルモン療法やHER2に対するモノクローナル抗体であるトラスツズマブによる治療に抵抗性であることが挙げられる。 タンパク質をコードしないnon-coding RNAの一つであるmicroRNA(miRNA)はさまざまな生命現象をコントロールしている。われわれはbasal-like subtypeに分類される乳癌には多型性を有し、接合性のやや乏しい組織像を呈するものが多いことから、上皮間葉転換(EMT)を引き起こす遺伝子をターゲットとするmicro RNAに着目し、その発現解析を行った。乳癌脳転移症例においてもbasal-like subtypeのものが多いことから、これについても引き続き解析を行っている。microRNAは生命現象をコントロールするだけでなく、治療ターゲットしても有用であることから、解析によって得られた新たな知見は、一群の治療抵抗性乳癌に対する分子標的治療への足がかりとなる可能性がある。
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