研究概要 |
○疾患における細胞内ピロリ菌の頻度 2007年7月の1ヵ月間に、当施設にて施行された胃生検全例について、TMDU抗体によるピロリ菌の検出と組織学的評価を行った。症例の内訳は、非腫瘍症例402検体、上皮性腫瘍症例106検体、悪性リンパ腫症例11検体であった。免疫染色の評価は、表層粘液層と粘膜固有層間質で別々に行った。陽性率は各々の疾患群の粘液層と固有層で、37%と36%、16%と23%、9%と27%となった。 疾患としては、特にピロリ菌感染が原因と考えられているMALTリンパ腫において特徴的な所見が得られることが期待されたが、上皮性腫瘍や非腫瘍症例との明らかな差異は確認できなかった。ただし、連続症例による解析のためリンパ腫検体数が十分でなく、リンパ腫症例の解析の追加を検討腸である。 ○細胞内感染と組織学的所見の対応 非腫瘍症例検体の中から粘液層にのみ陽性像を認めた検体22個と固有層にのみ陽性像を認めた検体18個においてシドニー分類に準じた組織所見を比較した。粘液層陽性検体においては、急性炎症が強い(score 2, 3)症例が過半(13/22)を占めており、慢性炎症が比較的軽度(score 0, 1)である検体が多かった(13/22)。一方、固有層陽性検体では、急性炎症は弱く(15/18)、慢性炎症が強い(13/18)傾向が見られた。 我々が以前行った胃癌手術材料の背景粘膜で得られた所見と同様に、表層ピロリ菌の存在が急性炎症と、細胞内ピロリ菌の存在が慢性炎症と相関することが示された。このことから、細胞内ピロリ菌が感染形態の時相やリンパ球への抗原提示に関わっている可能性が推測された。
|