研究概要 |
胆管癌の浸潤・転移における上皮・間葉変換機構(epithelial-mesenchymal transition, EMT)の関与を明らかにすることを目的とし,昨年度は培養胆管癌細胞(CCKS-1,TFK-1)と胆管癌の外科的切除材料を用いた検討を行った.本年度はこれまでの検討で得られた成績に基づき,胆管癌細胞(CCKS-1)をヌードマウスに移植したxenograft modelによる解析を行った.CCKS-1をヌードマウスの腹腔内に移植後,3週間目に開腹すると,肉眼的にも観察可能な腹膜播種結節が散在性に認められた.CCKS-1を移植後,リコンビナントTGF-β1(200ng)を連日,腹腔内投与したところ,腹膜にびまん性の播種巣が形成され,腹膜播種は悪化した.TGF-β1投与と同時にリコンビナント可溶性TGF-β type IIレセプター(4μg)を投与すると,TGF-β1による腹膜播種の増悪は改善した.播種した癌組織からホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製し,免疫染色による検討を行った結果,TGF-β1投与により癌細胞でのCK19の発現低下,vimentinとSnailの発現増強がみられ,癌細胞はEMTの形質を示した.これら形質の変化は可溶性TGF-β type IIの同時投与により抑制された. 以上の結果から,胆管癌の浸潤・転移にはTGF-β1とSnailを介した癌細胞のEMTが深く関与していることが示され,胆管癌においてTGF-β1のシグナリングをブロックすることが,癌の進展を抑制しうる可能性が示唆された.
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