| 研究概要 |
乳腺における神経内分泌腫瘍(B-NET)は、WHOの乳腺腫瘍分類(2003年)において、消化管や肺のNETと類似の形態を示し、神経内分泌マーカーが50%をこえる腫瘍細胞に発現する原発性乳癌と定義されているが、その生物学的特性はいまだ不明な点が多い。さらに、神経内分泌形質を有する非浸潤癌に関しては、WHO分類の中で、非浸潤性乳管癌(DCIS)のunusual variantsの一つとしてわずかに記載されているのみであり、その臨床・病理学的意義は明確ではない。
それゆえ、我々は、B-NETのpreinvasive counterpartとして位置付けられうる神経内分泌型非浸潤性乳管癌(NE-DCIS)にまず注目し、その臨床的意義と生物学的特性を明らかにする目的で、20症例のNE-DCISを、274症例のnon-NE-DCISと比較分析して検討を行った。その結果、NE-DCISは特徴的な臨床像(血性乳頭分泌症状、低術前診断率)および組織学的所見(腫瘍細胞の充実性増殖、発達した血管網、低異型度の病理所見等)を示すことが明確となり、乳腺のDCISにおける特殊な亜型としての意義を確立した[United States and Canadian Academy of Pathology(USCAP)Annual Meeting, 2010.日本病理学会秋期特別総会(B演説),2009]。さらに、我々は、NE-DCISの独特な細胞病理学的特徴(豊富な細胞採取量、形質細胞様腫瘍細胞の孤立散在像、腎糸球体様血管構築等)を明らかにし、本腫瘍の術前診断における穿刺吸引細胞診の有用性も示した[Cytopathology,2010(in press).USCAP Annual Meeting, 2010]。
NE-DCISは、B-NETの発生機構、自然史を理解・解明する上で重要な疾患概念であり、これらの研究成果を基盤として、B-NETの生物学的特性を明らかにしていく。
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