本研究計画においては、sFRP-4遺伝子ノックアウトマウス(sFRP-4 KO)新生仔頭蓋冠間葉系細胞の回収と、これを用いた培養系の確立を目指した。生後1週間以内の野生型マウス及びsFRP-4 KOマウスより、頭蓋冠を摘出後、間葉系細胞を回収し、頭蓋冠初代培養細胞とした。回収した頭蓋冠初代培養細胞を用いて、前年度までに行った、酸化的ストレス負荷試験と同様の手順でs-FRP-4など種々の遺伝子発現の変化を観察した。また、前年度にnatural courseでの同マウスの発育、加齢による硬組織変化を骨形態計測、μCTなどの手法で観察し、正常マウスとの比較を行ったが、本年度は、個体数を増やして同様の検討を行った。 結果:生後1週間以内のsFRP-4 KOマウス由来の頭蓋冠由来間葉系細胞は、概ね3回の継代が可能であった。形態的に、紡錘形細胞であり、ST2細胞などの骨髄間葉系細胞と同質の形態を示した。Methylglyoxal投与による酸化的ストレス負荷の前後で、野生型およびsFRP-4 KOマウス由来初代培養細胞のいずれも、骨代謝マーカー遺伝子(RANKL、OPG、Runx2など)の有意な変動は観察されなかった。 また、個体数を増やした個体での体重の推移は、正常マウスと同様であった。また、若年(17週齢)個体と高齢(46週齢)個体の大腿骨を用いた解析では、若年個体では、骨パラメータ量(骨構造に関するパラメータ(海綿骨量、骨梁幅、骨梁数など)、骨形成に関するパラメータ(類骨面、骨芽細胞面、骨石灰化面、石灰化速度、骨形成率など)、骨吸収に関するパラメータ(骨吸収面、破骨細胞数、破骨細胞面など))において、正常マウスとの間に有意差は見られなかったが、正常マウスに比較して、sFRP-4 KOマウスでは、高齢個体の骨形成パラメータは保たれることが再確認された。
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