糖尿病性骨合併症発症機構を解明するために、特に酸化的ストレスに注目し、マウス骨髄間質細胞株を用いてin vitro での検討を行った。酸化的ストレスは、secretedFrizzled-related protein 4 (sFRP-4)に加えて、破骨細胞分化因子(RANKL)の発現増強、逆にRANKL 阻害因子のOsteoprotegerin (OPG)発現を減少させた。またWnt/β-catenin 系シグナルの一部を抑制した。sFRP-4 に着目したところ、本遺伝子プロモータ領域TATA-box 近傍のCpG アイランドでは、定常状態で高頻度のシトシンメチル化が観察され、メチル化シトシン結合蛋白(MeCP2)を介する転写抑制機構が推察された。一方、酸化的ストレス環境下では、このCpG 配列のグアニン8 位に水酸化が起きた場合、MeCP2 結合に干渉して、TATA-box 結合蛋白(TBP)とTATA-box との結合の促進が観察され、酸化的ストレスによるsFRP-4 遺伝子発現再活性化機構を明らかにした。またin vitro の観察では、薬剤性に糖尿病を誘発した野生型マウスの大腿骨などで、骨梁減少が観察された。独自に開発したsFRP-4 欠損マウスは、自然経過での加齢による骨量減少に抵抗性であった。急激な酸化的ストレスはRANKL を介する急激な骨吸収を促進し、加齢などの緩やかな酸化的ストレス下では、sFRP-4 がWnt/β-catenin系を介する骨代謝回転を抑制することで、骨減少症ひいては骨粗鬆症を招来することが示唆された。
|