SMARCB1/INI1(以下INI1)蛋白発現異常をきたす、類上皮肉腫(以下ES)、および悪性ラブドイド腫瘍(以下MRT)において、鑑別に有用な蛋白として、glypican 3(以下GPC3)を見出し、それについて解析を行った。GPC3蛋白発現に関しては、陽性例がES1/49例(2%)に対し、MRT6/14例(43%)で、有意差を認めた(p=0.0003)。また、mRNA発現についても、GPC3陽性例では高値左呈していた。このようにGPC3がESとMRTの鑑別診断上有用なマーカーとなる可能性が示唆された。また、極めて予後の悪いMRTについて、新規治療法としての、GPC3をターゲットとした分子標的治療の可能性が示唆された。 また、ES、MRTと同様、分化方向不明な肉腫に分類される滑膜肉腫(以下SYT)について、小数例でINI1蛋白発現異常を来たすことを発見したため、多数の症例を用いて、解析し、診断上の有用点についで考察した。SYTでは66/95例(70%)の症例でINI1蛋白発現が減弱することを確認した。また、同時に鑑別診断に挙げられるような紡錘形細胞肉腫(線維肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、平滑筋肉腫)についてもINI1発現を評価したがいずれも蛋白発現は正常であった。従って、INI1蛋白発現はSYTとその他の腫瘍、MRT、ES、紡錘形細胞肉腫との鑑別にも有用である可能性が示唆された。 また、それらINI1蛋白異常を来たすMRT、ES、SYTのmRNA発現には大きな差があり(MRT : 6.19、ES : 40.52、SYT : 134.01)、INI1蛋白発現をコントロールしている機構、もしくは機序が各々異なっている可能性が考えられた。
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