研究概要 |
類上皮肉腫(Epithelioid sarcoma、以下ES)と悪性ラブドイド腫瘍(Malignant rhabdoid tumor、以下MRT)は現在の分類では異なる腫瘍とされているが、組織学的類似性より、その異同が議論されることもある。今回施行した網羅的microRNA解析の結果では、ANOVA検定で、56遺伝子に、また、Kruskal-Wallis検定で91遺伝子に有意差を認めた。従って両者は、遺伝子学的背景からも異なる腫瘍であることが示唆された。 また、ESとMRTとはSMARCB1/INI1(以下INI1)タンパク発現が欠失するという共通項がある。しかしながら、ESにはMRTにみられるようなINI1遺伝子の突然変異の頻度は低い。その点についても、今回の網羅的microRNA解析の結果と、以前に施行したINI1遺伝子解析の結果と合わせて検討したところ、INI1タンパク発現欠失に関連することが推測される2つの遺伝子を同定した(hsa-miR-19a, has-miR-193a-5p)。INI1はクロマチン再構成に関する重要なタンパクであるので、MRTとESとの生物学的悪性度の差にこれらの遺伝子が関与している可能性も考えられる。 さらには、INI1蛋白発現陰性の小児軟部発生未分化肉腫(以下US)とMRTについても検討した。両者の網羅的microRNA解析結果に基き、ピアソンの相関係数を算出したところ、0.7955となり、強い相関関係を認めた。以上より、従来病理学的に未分類であったUSは、MRTの未分化な一亜型である可能性があり、再分類できる可能性が示唆された。
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