研究課題
類上皮肉腫(epithelioid sarcoma、以下ES)と悪性ラブドイド腫瘍(malignant rhabdoid tumor、以下MRT)は、組織学的類似性やSMARCB1/INI1-(以下、INI1)蛋白の欠失などによりその異同が議論されているが、INI1遺伝子異常の頻度や予後、腫瘍進展など、多くの相違点が明らかになってい、る。(特に組織学的には、MRTとESの組織亜型の一つである近位型ESは極めて類似しているが、MRTと古典型ESとは異なる形態を有する。今回、網羅的microRNA解析の結果では、MRTとESとの相関係数が0.665、MRTと古典型ES、あるいは近位型ESとの相関係数は各々、0.741と0.752であった。それに対し、古典型ESと近位型ESとの相関係数は0.879であった。microRNAプロファイル上では、古典型、近位型ESにおける組織亜型間での相関性の方がMRTとの相関性よりも強く、MRTはESとは異なる腫瘍である可能性が示唆された。また、前年度に、INI1遺伝子異常を伴わずにINI1蛋白欠失が生じる原因がmicroRNAによる制御であるならは、その候補mioroRNAとして、2つの遺伝子(has-miR-19a、has-miR-193a-5p)を同定していた。これらに関して、INI1遺伝子異常を伴うMRTと、INI1遺伝子異常を伴わない古典型ES、及び、近位型ESに関するパラフィン包埋切片を用いた多数例での発現解析を行ったところ、両遺伝子ともに腫瘍別(組織亜型を含む3群間)の発現に有意差を認めた(has-miR-19a;P=0.04,has-miR-193a-5p;P=0.02)。ただし、INI1蛋白欠失の原因となりうるためには、対象とした正常骨格筋(normal skeletal muscle、以下NSM)よりも、古典型および近医型ESのmicroRNA発現のほうが有意に高くなくてはならず、これに該当するものとしては、has-miR-193a-5pが考えられた(NSM1 vs近位型ES;P=0/02,NSM vs古典型ES;P=0.000026)。
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