これまでのわれわれの報告でHsp90は結合分子を初期エンドソームに輸送・局在させる、すなわち時間的・空間的制御能を有することを明らかにした。今回、ヒトHsp90とヒト腫瘍抗原であるサバイビン2Bの複合体を健常人末梢血から分離したmDCにパルスすると非常に効率よくクロスプレゼンテーションされサバイビン2B特異的CTLを強く活性化することが示された。さらに、このようなHsp90の機能を利用して免疫活性化能をもち、免疫治療のアジュバントとして利用されているCpG-ODNの免疫応答調節に関して検討した。Hsp90とCpG-ODNの複合体をin vitroで作成した。この複合体をヒトPBMCから分離したmDCとpDCの樹状細胞サブセットに刺激しIFN-αの産生を測定すると、CpG-ODNを認識するTLR9を持たないmDCでは産生しないが、pDCでは有意に産生が増強することが明らかになった。CpG-ODNの免疫応答にはTLR9が必要であることは、TLR9ノックアウトマウス由来の樹状細胞ではIFN-αの産生が完全に抑制されたことと矛盾しない。これらの事実よりHsp90は生体に存在するため安全かつ有効なアジュバントとして期待される。また本来免疫原性を持たない自己のDNAもin vitroでHsp90と複合体を作成し、pDCに刺激するとIFN-αを産生するようになることが明らかになった。全身性自己免疫疾患において血清中にHsp90が高率に検出されることが報告されており、細胞死によって放出されたHsp90-自己DNA複合体による樹状細胞の活性化が病態の増悪に関わる可能性が示唆された。現在Hsp90が初期エンドソームへ時間的・空間的に制御されるそのメカニズムを解析しており、全身性自己免疫疾患の治療への応用が期待される。
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