研究概要 |
現在、EGFRとMETは肺腺癌の分子標的治療のターゲットとして注目されているものの、EGFRとMETの発現、活性化、遺伝子異常が互いにどのように関連しているのか、よくわかっていない。われわれは、40の肺癌細胞株(主に肺腺癌)は、その遺伝子発現プロファイリングによって、2群に分かれ、EGFRとMETのco-activationは、ある種の特徴的な肺癌の一群に集中することがわかった。すなち、Group I(n=22)は、(1)METとEGFRの高い活性化を示し、(2)EGFR、MET、HER2の遺伝子異常を高頻度に有し、なおかつ、(3)気管支上皮マーカー(TTF-1,MUC1,CK7)の高発現と、(4)MET,HER3,cox-2,laminin gamma2などの癌浸潤・増殖関連遺伝子を高発現するのに対し、Group II(n=18)は、(1)METとEGFRの活性化レベルは極めて低く、(2)EGFR、MET、HER2の遺伝子異常を全く有さず、(3)気管支上皮マーカー(TTF-1,CK7,MUC1)はtriple negativeを示し、(4)FGFR1,vimentin,TCF8の高発現を示した。薬剤感受性を調べたところ、Group IはGroup IIに比べ、cisplatinとpaclitacelに対して抵抗性を示すが、Gefitnibに対しては感受性を示した。さらに、我々は442例の肺腺癌症例の遺伝子発現データをもとにクラスター解析を行い、Group I、Group IIそれぞれに相当する群が、それ以外の群(気管支上皮マーカーを高発現するも、癌浸潤・増殖マーカーは低い群)より、いずれも、組織学的に低分化、かつ、予後不良であるが、術後化学療法によって生命予後の向上が見られたのは、Group II相当の症例のみであることを確認した。我々の分類は、分子標的治療、化学療法のどちらを肺腺癌治療の第一選択とするか、決定する上で非常に有効である。
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