【研究の目的】浸潤部において癌細胞の結合性が低下し、紡錘形細胞に移行することはepithelial-mesenchymal transition(EMT)と考えられている。EMTは癌細胞の浸潤・転移の第一ステップとして重要であり、Snai1はEMTに関与する主要な転写因子であ。臨床的に紡錘形細胞癌を合併した腎細胞癌は早期に再発し、予後不良であることから、本研究では、腎細胞癌おけるSnai1発現を調べ、その臨床病理学的意義を検討した。 【方法】原発性腎細胞癌100例(淡明細胞癌86例、乳頭癌10例、嫌色素細胞癌4例)を対象にSnai1発現を免疫組織学的に検討し、Snai1発現と臨床病理学的因子の関連および予後との相関を解析した。 【結果】淡明細胞癌のG1・G2、乳頭癌、嫌色素細胞癌では一部の癌細胞のみがSnai1弱陽性であったが、淡明細胞癌のG3では多くの癌細胞がSnai1陽性であった。特に淡明細胞癌に合併した紡錘形細胞癌ではSnai1強陽性であった。Snai1発現は組織学的異型度と相関していた.Snai1高発現例は低発現例に比べ再発率が高く、予後不良であった。
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