研究概要 |
近年、肝細胞癌に対する分子標的治療薬も注目されるようになり、sorafenibなど多標的チロシンキナーゼ阻害薬は従来の抗癌剤より良い効果が得られたと報告されたが、腫瘍の浸潤・転移など複雑な生物学的現象に与える影響や機能について解明されていないところが多い。本研究では、ヒト肝細胞癌株と肝細胞癌の進行症例に相当する肝細胞癌転移モデルを用いて、分子標的治療薬の機能と作用機序を解明することを目的とする。 平成21年度では、sorafenibのin vitroにおいて各肝細胞癌株(KYN2,Li7,HepG2,KIM1,PLC/PRF/5)に対する影響について研究した。接着培養条件下では、sorafenibによる肝癌細胞の増殖抑制効果はKYN2とHepG2において顕著に認められるが、Li7とPLC/PRF/5において効果が低い。KIM1に対する効果はKYN2とLi7の中間に相当する。浮遊培養条件下では、KYN2とHepG2はsorafenibによる高度の増殖抑制効果が認められるが、Li7は反応性が低い。PLC/PRF/5)の反応性はその中間に位置する。KIM1は浮遊培養条件下では増殖自体が低い。生体内での腫瘍の発育進展における多様な状況を反映すると考えられる各種培養条件により、反応性に若干のvariationが見られるが、全体として、KYN2,HepG2,KIM1が高感受性、PLC/PRF5,Li7が低感受性と分類できる可能性がある。Microarryで検討した結果、KYN2,HepG2,KIM1グループは、PLc/RPF5,Li7グループより、IRS1,FGFR3,FGFR4,ERBB3,LYN遺伝子の発現が高く認められる。これらのタンパク分子の発現、リン酸化亢進について肝細胞癌株と肝細胞癌臨床材料を用いて検討することで、sorafenibの肝細胞癌における治療効果の予測と効果判定への応用が期待できる
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