研究概要 |
これまで再生医療応用を目指した成育医療センター・バイオリソースとして、様々な間葉系細胞の分離・培養に成功し、セルバンク化を進めてきた。これら希少なヒト細胞のうち、子宮内膜細胞、羊膜細胞、胎盤動脈細胞、月経血細胞、および胎児肺線維芽細胞のゲノムDNAを採取し、網羅的DNAメチル化解析に用いた。ゲノムDNA上の26,770箇所におけるDNAメチル化状態を収集し、各ヒト細胞におけるDNAメチル化プロファイルを行った。クラスター解析、主成分解析の結果、由来の異なる細胞が明確に判別でき、細胞の種類や特性に一致する分類が明確に可能であることが明らかになった。また、5種類のヒト細胞おける個々のメチル化状態について詳細に解析を行ったところ、解析した26,770箇所のうち、21,430箇所は異なる細胞間でDNAメチル化状態に差はなく、全体の19.95%の5,340が細胞特異的メチル化可変領域(T-DMR)であった。各細胞特異的なT-DMR遺伝子の数は、子宮内膜細胞43、羊膜細胞246、胎盤動脈細胞438、月経血細胞84、および胎児肺線維芽細胞321遺伝子であった。細胞特異的T-DMR遺伝子の内訳を見てみると、子宮内膜細胞では、HOXA9、羊膜細胞では、ZIC5、HOXB4、胎児肺線維芽細胞では、HOXB6、ZNF581、など発生、分化に重要な役割を示す遺伝子群が同定されているのが分かる。HOXやGATA、FOX関連遺伝子などが遺伝子発現解析ではなくDNAメチル化解析から抽出されてきた点は非常に興味深く、細胞の維持や分化の方向を規定する分子マーカーとして利用価値が高い。引き続き解析するヒト細胞を追加し、各細胞のDNAメチル化状態を比較検証することで細胞特異的T-DMR遺伝子を同定し、細胞固有のDNAメチル化パターン情報の収集と細胞特異的T-DMR遺伝子の詳細な解析を継続して行う。
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