研究課題/領域番号 |
21790372
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西野 光一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90508144)
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キーワード | ヒト幹細胞 / ヒトiPS細胞 / DNAメチル化 / 診断企画化・標準化 |
研究概要 |
各種ヒト間葉系幹細胞において、癌関連遺伝子、未分化マーカー遺伝子、分化誘導遺伝子等を中心に網羅的なDNAメチル化解析を行いヒト間葉系細胞のDNAメチル化プロファイリング化を進めてきた。本年度はさらにヒトiPS細胞の網羅的なDNAメチル化解析、網羅的発現遺伝子解析結果を加え、比較横断的解析から再生医療に向けた細胞の品質の規格化と管理を行うための有用なデータを得ることができた。 ヒト間葉系細胞、ヒトiPS細胞およびヒトES細胞の網羅的DNAメチル化解析からiPS/ES細胞特異的メチル化可変領域を220箇所同定した。さらに網羅的遺伝子発現解析データとの関連解析からiPS細胞におけるDNAメチル化変化と発現変化に相関のある8遺伝子(EPHA1、PTRN6、RAB25、SALL4、GBP3、LYST、SP100、UBE1L)を同定した。これら8遺伝子は、新たなエピジェネティクマーカーとして、iPS細胞の評価指標として使用できる。さらにiPS細胞における異常メチル化領域を同定し、詳細な解析を行った。22iPS細胞株間で共通の異常メチル化領域は検出できなかった。しかし、各iPS細胞株とES細胞を比較すると、200-300領域においてES/iPS間で異常メチル化領域が検出されたことからiPS細胞における異常メチル化はゲノムDNA上にランダムに起こる現象であることを明らかにした。これら異常メチル化は一過性の高メチル化を経て長期培養と共に消失し、iPS細胞はES細胞に性質が近づいていくことが明らかになった。これらの結果はiPS細胞におけるリプログラミング機構の一端を明らかにしたものである.iPS/ES細胞特異的メチル化可変領域のDNAメチル化状態の測定と異常メチル化領域の数の検定は、ヒトiPS細胞比較評価指標として有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は特にヒトiPS細胞の解析結果を加え、iPS/ES細胞特異的メチル化可変領域の同定と異常メチル化領域の詳細な動態を明らかにすることができた。異常メチル化領域のモニタリングは、よりES細胞に近いiPS細胞を同定するための新たなエピジェネティク指標として有用である。これらの結果は、再生医療へのiPS細胞利用に向けて、iPS細胞の評価や品質の規格化に貢献できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は人為的DNAメチル化改変技術の開発を進める。本研究で同定したiPS/ES細胞特異的メチル化可変領域OCT-4、NANOG、TERT遺伝子など未分化関連因子のDNAメチル化を人為的に制御できれば、より高効率で安全なiPS細胞の樹立方法の確立や、iPS細胞から特定の細胞への効率的な分化誘導法の開発に繋がる。 現在、ヒト間葉系細胞、iPS細胞における5-azadeoxycytidine(5-aza-dC)やヒストン修飾酵素の感受性、脱メチル化効率、遺伝子発現効率などの基礎データの収集を進めている。
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